精密機器の輸送にまつわる業務とは?荷役作業や倉庫管理業務まで解説

精密機器はたくさんの小さな部品でできているため非常に繊細です。小さな衝撃や振動で故障してしまうリスクがありますので、最新の注意を払って取り扱う必要があります。
精密機器の取り扱いで注意しなければならない場面といえば輸送時がありますが、移転作業を行なったり、荷役作業を行なったり、倉庫管理をする課程においても注意が必要です。
そこで今回は精密機器の輸送にまつわる業務について、輸送から倉庫管理まで幅広くご紹介します。
【精密機器とは】
精密機器は小さな部品が多数組み合わさってできている精度の高い機器のことです。
非常に繊細な作りになっており、取り扱い方を間違えると故障したり不具合が発生したりするリスクがあります。
精密機器というとあまり馴染みがないもののように感じるかもしれませんが、パソコン・スマートフォン・サーバーなどの通信機器、オーディオ・テレビなどの電気機器、複合機やシュレッダーなどのOA機器など身近な機器も含まれています。そのほか医療機関で検査などの際に使用する各種医療機器や、顕微鏡・望遠鏡などの光学機器、工場などで使う工作機器、ATMや券売機などもあります。
【精密機器の輸送にまつわる各種業務】
精密機器の取り扱いでもっとも注意しなければならないのは輸送時ですが、他にも注意すべきタイミングが多々あります。
この章では「輸送業務」と「移設作業」、輸送にまつわる「荷役作業」「倉庫管理業務」についてご紹介します。
<輸送業務>
輸送とは、人や物を目的の場所まで移動させることです。陸上輸送のほかに海上輸送や航空輸送もありますが、国内の貨物輸送の9割が陸上輸送となっています。
精密機器を輸送する際には、一般的な方法ではなく特別な対応が必要です。
同じ箱を使って運ぶとしても、梱包材の使い方を工夫したり、段ボールよりも頑丈な箱を用いたり、梱包方法にも工夫します。トラックなどに積み込む際の固定方法を工夫したり、コンテナを使って積み込んだりといった工夫も必要です。
取り扱う精密機器によっては温度調節や湿度調節が可能な車体を利用することもあります。
こうした対策以外にも、いかに振動が少ないルートで輸送を行うかといったことも検討するなど多方面に配慮することで安全な輸送が実現できます。
輸送の中には、トラックから下ろしたところで受け渡しが完了になることもあれば、搬入据付まで行える業者もあります。精密機器においては個人での取り扱いが非常に難しいので、搬入据付まで行なってもらうことが望ましいでしょう。
<移設作業>
新しい商品の運搬や管理だけではなく、オフィスや工場、研究施設などの移転作業やレイアウト変更においても精密機器は取り扱われます。オフィスによってはエレベーターがないこともあり、狭い通路や階段を通って安全に移設することが求められるケースもあります。CADによる軌跡図作成・工程計画を行うことで、安全な移設が実現可能です。
また、移設・移転時に一部の荷物を処理するケースがありますが、産業廃棄物収集運搬許可がある輸送業者であれば産業廃棄物として処理してもらえます。
<荷役作業>
荷役とは本来船荷を上げ下ろしすることを意味していますが、陸上における貨物の積み込みや荷下ろし、倉庫の入出庫などの作業についても荷役作業といいます。フォークリフトを使った作業においては事故も多いので注意が必要です。荷役作業では貨物を上下左右と動かすことになりますので、精密機器の場合は細心の注意を払って取り扱うことが求められます。
荷役作業の具体的な業務をご紹介します。
・ピッキング業務
出荷指示データに基づき、商品を倉庫よりピックアップする業務です。出荷指示に基づいて特定の場所に商品をまとめる荷揃えやピッキングされた商品を仕分ける仕分けも含めてピッキング作業ということもあります。
・フォークリフト業務
フォークリフトを使って貨物を下ろして倉庫に格納したり、倉庫から出した貨物を車両に積み込んだりします。
・クレーン業務
精密機器には大きなものもありますので、その場合はクレーンを使って車両に積み込むケースがあります。
・出荷確認(配送ラベル貼り)
出荷品の数量を確認し、配送ラベルを貼り付けて最終チェックを行います。
<倉庫管理業務>
倉庫管理業務とは、倉庫内で保管している商品に対する様々な作業を管理をする業務です。商品を入荷してから出荷するまでの間に商品が破損・故障するようなことがあってはいけません。製品の品質を保ち、必要なタイミングでスムーズに商品を出荷できるように段取り・管理をする必要があります。誤配送を防ぐための対策も必須です。精密機器においては、移設のタイミングで倉庫内で一時保存しておくという利用方法も多いです。
倉庫管理業務には「入出庫作業」の他に「在庫管理業務」も含まれます。「在庫管理業務」とは在庫数を適切に把握し、発注量やタイミングを管理することです。
倉庫管理では商品の安全性を保つのはもちろんのこと、いかに効率的に行うのかということが求められます。
【精密機器を取り扱う際の注意点】
精密機器を取り扱う際に注意したいポイントをご紹介します。
・衝撃や振動
精密機器の取り扱いでは衝撃だけではなく振動にも注意が必要です。落下させたり、ぶつけたりすることはもちろん避けなければなりませんが、通常の持ち運びで発生するような小さな振動でも精密機器には悪影響を及ぼすリスクがあります。
車両による輸送、荷役業務における移動、倉庫内における移動などによって発生する振動についても注意が必要です。
・温度や湿度
精密機器の中には、高温や低温、高すぎるまたは低すぎる湿度によって悪影響が及ぶものがあります。基本的に、温度は18~26度、湿度は40〜50%が適切であるとされています。
急激な温度変化によって結露が小じることで電気回路の破損を引き起こすこともリスクの一つです。海外輸送の場合は激しい温度変化が起こるリスクが高いです。湿度が高いとサビや腐食が発生しやすくなり、逆に湿度が低いと静電気の発生による電気系統の故障リスクが高まります。
輸送用の車両や倉庫においても、温度や湿度の管理が必要です。
・水濡れ
雨などによって水濡れしてしまうと電気回路が故障したりサビや腐食が発生したりするリスクがあります。
車両や倉庫などの設備の管理や、天候に合わせた輸送スケジュールの管理などが必要です。
【精密機器の取り扱いを依頼するときの業者選定ポイント】
精密機器を安全に取り扱ってもらうためには、業者選びが大きなポイントになります。
一般的な輸送業者や倉庫管理業者に依頼すると、大切な精密機器が破損・故障のリスクに晒される可能性が高まってしまいますので、慎重に業者選びを行いましょう。
この章では、業者選定ポイントについてご紹介します。
<実績を確認する>
精密機器を輸送する際の梱包技術や固定技術、倉庫管理時の取り扱い技術が必要です。
この技術力を確かめるために、業者の過去の実績について確認してみましょう。
自社が依頼したいと考えている精密機器の取り扱い経験はあるのか、どんな梱包方法を行なっているかなどを確認することで、技術力を知ることができます。
<作業工程に関する提案・説明を確認する>
精密機器の輸送や移設においては、「何を」「どれくらい」「どこに」「いつ」輸送・移設するのか、搬入経路や搬入位置はどうなっているのかといったことを示した作業計画書や工程表が作成されます。倉庫の保管についても、どんな場所にどのように保管するのかといった丁寧な説明をしてくれることが望ましいです。こうした事前準備を丁寧に行わなかったり、書類として準備していなかったり、具体的な提案や説明がない業者は安心して依頼できる業者とはいえません。提案内容はもちろん、こちらからの質問などにも丁寧に回答してくれる業者であれば、責任を持って業務を完遂してくれることが期待できます。
<安全管理に対する意識を確認する>
精密機器の取り扱いについては「これくらい大丈夫だろう」というちょっとした気の緩みが、故障や破損のリスクを高めてしまいます。それくらい取り扱いには細心の注意が必要なのです。
そのため安全管理に対する意識の高さも業者に求めたい大事なポイントです。実際の対策の内容から窺い知ることもできますが、話をしている様子から安全管理に対する高い意識が感じられるかというのも重要なポイントです。
<保険加入の有無や保険の内容を確認する>
高い技術力を持った業者に、高い危機管理意識をもって対応をしてもらったとしても故障や破損のリスクは0にはなりません。万が一の時に備えて保険に加入しているかどうかは必ず確認してください。保険に入っていても補償内容が十分でなければ意味がありません。保険の内容や保険の費用についても細かく確認しておきましょう。基本的な補償の他に、残存物取片付け費用担保特約、 検査費用担保特約、誤配送費用担保特約などのオプションが付けられたり、補償金額を上げられたり、カスタマイズできることもあります。
【まとめ】
非常に繊細な機器である精密機器の取り扱いには、特別な注意を払う必要があります。輸送時の対応はもちろんのこと、移転・移設の対応や、荷役作業時、倉庫管理時においても注意して対応しなければなりません。注意しなければならない点は、衝撃や振動だけではなく、温度や湿度、水濡れなど多岐に渡ります。精密機器を専門としてる業者が、単なる輸送だけではなく、移転・移設や倉庫管理などの業務も総合的に請け負ってくれると安心です。
精密機器は非常に高額なものも多いため、ちょっとした気の緩みや対応の甘さが大きな損失につながる可能性があります。確かな技術力を持ち、事前準備を丁寧に行い、高い危機管理意識を持った業者に依頼するようにしてください。