精密機器の輸送や搬入時は衝撃に注意!衝撃対策を徹底紹介

精密機器はほんの小さな衝撃でも故障したり不具合を起こしたりしてしまうリスクがある非常に繊細なものです。取り扱い時には、衝撃以外にも注意しなければならないポイントがいくつかありますが、特に衝撃対策は重要といえるでしょう。
精密機器は高額なものが多く、故障や破損が発生してしまうとその損害額が大きくなります。輸送や搬入時の衝撃対策は欠かせないものですが、精密機器においてはより一層の配慮が必要です。
そこで今回は、精密機器の輸送や搬入をする際にの衝撃対策についてご紹介します。
【精密機器とは】
具体的には、どのような機器が精密機器にあたるのでしょうか。
小さな部品によって複雑に構成されている精度の高い機器を精密機器といいますが、専門的なものから身近なものまでその種類は幅広いです。
身近なものでいえば、オフィスなどで使用される「パソコン、スマートフォン、サーバーなどの通信機器」「プリンター、スキャナー、大型複合機などの出力機器」などがあります。「顕微鏡・望遠鏡などの光学機」も比較的身近なものといえるでしょう。駅で見かけるATMや券売機なども精密機器の一つです。他にも、医療・介護施設で使用される「人工呼吸器、ペースメーカー、音波診断装置などの医療機器」「電動昇降式ベッド、車いすなどの福祉機器」もあります。専門的なものでは「光散乱光度計、分離分析機器、赤外分光光度計などの分析機器」「マニシングセンタ、レーザー加工機、レーザー彫刻機などの工作機械」などもあります。
【衝撃だけではない!精密機器輸送・搬入時に注意すべき様々なリスク】
精密機器を輸送、搬入する際に衝撃のリスクに対して細心の注意を払わなければなりませんが、それだけでは十分とはいえません。精密機器の輸送や搬入時に注意したい衝撃やその他のリスクについてご紹介します。
・衝撃
まず第一にご紹介したいリスクは「衝撃」です。衝撃というと落下や激しい接触などで引き起こされるものをイメージするかもしれませんが、精密機器の場合は小さな振動や軽い接触でも影響を与える可能性があります。例えば、トラックが普通に道路を走っている時の振動、搬入時に設置した時のちょっとした振動なども故障の原因となり得るのです。
・温度
多くの精密機器は、高温や低温に弱かったり、急激な温度変化に弱かったりすることが多いので、適切な温度に保つことや温度変化を最小限に抑える配慮が必要です。
急激な温度変化は結露を発生させる恐れがあり、それが原因で電気回路の破損を引き起こすリスクがあります。寒暖差の激しい季節や、海外輸送の際には特に注意が必要です。
温度は18~26度程度が最適とされています。
・湿度
湿度が高すぎる、低すぎると故障のリスクが高まります。
湿度が高すぎるとサビや腐食が発生しやすく、湿度が低いと静電気が発生しやすくなり、どちらも故障の原因となる可能性があります。
湿度は40〜50%程度が最適とされています。
・水濡れ
多くの精密機器にとって水分は大敵です。防水処理が施されているものであっても、輸送中に水濡れしてしまうようなことは絶対避けなければなりません。水濡れが発生すると、電気回路が故障したり、サビが発生したり腐食したりするリスクがあります。
天候が悪い時の輸送はもちろん、急激な温度差による結露も水濡れのリスクとなります。
【精密機器を取り扱い際の衝撃対策】
精密機器を取り扱うときにもっとも注意しなければならないことは衝撃です。
前述の通り、小さな振動が故障につながるケースもあるので細心の注意が必要です。
業者が行う衝撃対策だけではなく、自分たちで輸送するケースや自分たちで梱包して輸送するケースも想定して、精密機器を取り扱う際の衝撃対策についてご紹介します。
<衝撃を軽減するための梱包を行う>
大前提、精密機器を取り扱うに当たって振動を0にすることはできません。そのため、衝撃が精密機器に伝わるのを最小限にするための梱包を行います。
業者が行う専門の梱包方法としては、形状に合わせた様々な緩衝材を使って衝撃を緩和する方法があります。単に隙間を埋めるということではなく、精密機器の形状に合わせて緩衝材の素材や形を選択します。
緩衝材には、中に空気が入っているビニール製の「エアークッション」や、コーンスターチを主な材料とする自然に優しいまゆ状の柔らかい素材でできた「ソフト緩衝材」、精密機器の角を守るために箱の角に設置する「角保護緩衝材」など様々な種類があります。
「エアークッション」は大小様々なサイズがあり、枕のような形をしたものが主流です。先に精密機器を入れてから後で空気を入れて精密機器全体を保護できるものもあります。箱よりも小さい精密機器を運ぶ時には、隙間をしっかりと埋めて内部で動かないようにすることで衝撃を防止することができます。
「ソフト緩衝材」は柔らかい素材でクッション性に優れており、隙間を埋めるのに適しています。しかし、その柔らかさゆえに精密機器の重さによっては緩衝材がつぶれて十分な保護ができなくなる可能性があるので注意が必要です。
「角保護緩衝材」は段ボールや発泡スチロール製のものがあり、クッションがありながら重みにも耐えられるため、重量のある精密機器であっても保護できます。
自分たちで梱包する際においては、気泡緩衝材を購入して利用するのが一般的ですが、それ以外にタオルや古着で代用する方法もあります。
精密機器を輸送するときのケースにも種類があり、最適なものを選ぶことでより衝撃を軽減することができます。代表的なケースである紙の段ボールにも種類がありますし、プラダン(プラスチックダンボール)、密閉木箱、スチール梱包箱などを利用することもあります。後者ほど丈夫にできていますが、とくにスチール梱包箱は木材と比較して強度が16倍程度あるといわれており、工作機械やプレス機などの精密機器の梱包に使用されることが多いです。繰り返し使えるエコな梱包材でもあります。
<箱自体が動かないようにしっかりと固定する>
箱の中でしっかりと固定されていても、荷台の中で動いてしまっては衝撃が発生します。荷台のなかでできるだけ揺れなどによる衝撃が伝わらないように、ロープやベルト、金属チェーンなどを使ってしっかりと固定する必要があります。ロープは柔軟性があるため特殊な形状の貨物にも対応できますが、小型や軽量な精密機器向けといえます。ベルトの固定はトラック輸送やコンテナ輸送によく使われる方法で、強度も確保できますし、簡単に締め付けができます。チェーンは金属でできており丈夫なため、重量物や大型の精密機器を固定する際に適しています。
<精密機器を取り扱っていることを意識して丁寧に作業する>
いうまでもありませんが、精密機器を取り扱っているという意識を十分に持ち、丁寧に取り扱うことは衝撃対策の一つの重要ポイントです。同じ運搬や搬入を行うにあたっても、どのような意識で行うかによってその質はかわってきます。
企業においては、こうした意識を持つことを徹底できるような教育を行うことも一つの重要な対策といえます。従業員一人一人が高い意識を持ち、お互いに注意喚起し合えるような環境が望ましいでしょう。
<衝撃レコーダーや衝撃ステッカーを活用する>
衝撃レコーダーや衝撃ステッカーなどを取り付けることで、輸送中の衝撃を感知することができます。衝撃ステッカーが貼ってあることで作業担当者の注意喚起にもなりますし、今後さらに衝撃を減少させる方法を検討するための情報取得にも役に立ちます。
<振動が最小限になるような運転を行う>
精密機器の輸送にあたっては、ドライバーの運転技術や意識も重要なポイントの一つです。
スピードを出しすぎず、急発進、急ブレーキ、急旋回などをしないように気をつけて運転する必要があります。こうした急激な車両の動きは衝撃を与えるだけでなく、積荷の変形、固縛のゆるみ等にもつながります。
<衝撃が少ない輸送経路を事前にきめる>
整備されていないような道や急斜面など、精密機器に衝撃を与える可能性があるような箇所を通過しない輸送経路を事前に決めておくことで、衝撃を軽減することができます。
<保険に加入する>
衝撃自体の対策ではありませんが、どれだけ対策をしても精密機器の故障や不具合を100%防げないことを考えると、保険に加入しておくことは重要な対策といえます。特に精密機器は高額なものが多いですから、万が一破損したり故障したりしてしまうと大きな損失となります。輸送会社によって補償内容が異なりますので、保険に加入していることに安心するのではなく、その内容についても十分に確認する必要があります。
【まとめ】
精密機器は非常に繊細で故障しやすいため、輸送や搬入の際には、衝撃、温度・湿度管理、などへの細心の注意が必要です。特に衝撃のリスク軽減には様々な対策を施す必要があります。
梱包、固定、意識、運転技術、適切なルート選定など、対策を打てるポイントは多々あります。できる限りの対策を講じた上で、十分な保険に加入して精密機器の輸送や搬入を行うようにしましょう。