精密機器の取り扱い時に注意したい温度管理・湿度管理とは?

精密機器とは、小さな部品が多数組み合わさってできている精度の高い機器のことで、日々生活する中でも実は多くの精密機器に関わっています。破損や故障のリスクが高い非常に繊細な危機であり、取り扱いの際には様々な面に注意を払う必要があります。衝撃に対する注意はイメージがしやすいかと思いますが、精密機器の場合は温度や湿度の変化によっても故障を引き起こす可能性があるのです。
精密機器の取り扱いで注意しなければならない場面には、輸送や移転・移設作業、荷役作業、倉庫管理作業などがあります。個人や企業としても、精密機器を取り扱う何らかの作業を依頼する場合には、信頼のおける業者を選定する必要があるといえるでしょう。
そこで今回は精密機器の取り扱い時に注意しなければならないことのうち、温度管理や湿度管理について詳しくご紹介するとともに、輸送や移設を依頼する際の業者選びのポイントについてご紹介します。
【精密機器とは】
精密機器とは小さな部品が多数組み合わさってできている精度の高い機器ですが、比較的身近に存在しています。
パソコン・スマートフォン・サーバーなどの通信機器、オーディオ・テレビなどの電気機器、複合機やシュレッダーなどのOA機器、顕微鏡・望遠鏡などの光学機などは、多くの人が目にしたり使ったことがあるものではないでしょうか。街中で利用する券売機やATMなども精密機器の一部ですし、医療機関で検査などの際に使用する様々な医療機器、福祉の現場で活用される電動昇降式ベッドや車いすなども精密機器です。
【精密機器を取り扱う際のリスク】
精密機器輸送を取り扱う際のリスクとしてまず挙げられるのは衝撃です。精密機器を倒してしまったり落下させてしまったり、壁などにぶつけてしまったりして発生する衝撃はもちろん避けなければなりませんが、精密機器の場合はトラックなどの輸送車両で輸送中に発生する小さな揺れや、人の手や機械を使って移動させるときの揺れによっても故障するリスクがあります。
続いて注意したいのが、今回主にご紹介したい温度管理と湿度管理です。
精密機器は、温度が高すぎたり低すぎたりすることで故障する可能性があり、基本的には18~26度程度が最適な温度となっています。
また急激な温度変化も故障の原因となる可能性があり、これは急激な温度変化が結露を発生させるリスクがあるからです。機械内に水分が発生することにより電気回路の破損を引き起こす恐れがあります。
湿度についても、高すぎる場合と低すぎる場合の両方でリスクがあります。基本的には40〜50%程度が最適な湿度となっています。湿度が高い状態になるとサビや腐食が発生しやすくなり、湿度が低いと静電気が発生するリスクが高まるため湿度管理にも十分に配慮しなければならないのです。
適性ではない温度や湿度の中で精密機器を使い続けた場合、すぐに故障しなくとも徐々に性能が劣化してしまうことも考えられます。
【精密機器の温度管理と湿度管理のための対策】
この章では、温度管理と湿度管理のための対策と、両方の管理において導入したい対策についてご紹介します。
<温度管理のための対策>
・空調設備の活用
トラックなどの輸送機器や、精密機器を使用する施設内に空調設備を完備することが最も一般的な温度管理のための対策です。
コストはかかりますが、季節に関わらず温度調節ができますし、機器に合わせた最適な温度を設定することもできますので、精度も高いです。
・断熱材や二重窓を活用
外気温の影響を減らすために、断熱材や二重窓を活用することで室内や車内の温度を適切に保つ対策方法です。外気温の変化による影響も緩やかにできるといえます。過ごしやすい季節であれば空調設備なしで温度管理ができることもありますが、基本的には空調設備と併用する必要があります。
空調設備だけでなく、断熱材などの工夫を加えることによって、温度管理の精度を高められるだけではなく光熱費の節約効果も期待できます。
・通気性のよいレイアウト
使用する際に機器自体が一定の熱を発する精密機器の場合、配置する際のレイアウトにも配慮が必要です。通気性のよいレイアウトにすることで熱がこもることを防止でき、機器自体の異常な発熱や、発熱による空気中の温度上昇をおさえることができます。
輸送時は電源が切れているので発熱することはないかと思いますが、バッテリー搭載の精密機器の場合は確実に電源を切るとともに、誤って電源が入ってしまうことがないように十分に注意しましょう。
<湿度管理のための対策>
・恒湿装置(除湿器・加湿器)の活用
恒湿装置とは、室内や密閉空間の湿度を一定に保つための装置です。湿度が高すぎる・低すぎるのを防ぎ、適切な湿度環境(精密機器の場合40~50%程度)を維持してくれます。
空調機同様にコストはかかりますが調湿効果が高く、多くの場面で活用されています。
・耐熱カバーや結露防止カバーを取り付ける
急激な温度変化が発生したり冷たい機器表面に湿気が触れたりすることで結露が発生するため、精密機器を断熱材で覆うことで外気との温度差を緩和することができます。その他、防湿・防結露効果のある特殊コーティングを施す方法もあります。輸送時や使用しない時には結露防止カバーや保温カバーで覆っておく方法も有効です。
・ 防湿効果のあるパッケージングをする
輸送時や長期保管時には、防湿袋・乾燥剤(シリカゲル)を入れたうえでバリア(防湿バリアメタル)で製品を覆うバリア梱包が有効です。密閉木箱梱包も防水・防湿効果があります。これは、板材で隙間を塞ぎ密閉する梱包方法です。
さらに、湿度インジケーターで状態の目視確認を行うと効果的でしょう。
<温度管理・湿度管理の両方で取り入れたい対策>
・ 温度、温度センサーの設置とモニタリング
温度管理・湿度管理の両方で活用したいのが、温度、温度センサーの設置とそれらのモニタリングです。IoT化が進み、IoT温度センサーを使ったリアルタイムの温度と湿度の監視が可能となっており、その性能も非常に高いです。異常を検知した場合、アラート通知してくれますので、発見が遅れたことによる大きな損失リスクを軽減できます。
高性能センサーの導入にはコストがかかりますが、機械に任せることによって人件費を削減できますし、高い性能でリスクを回避することは大きなコスト削減にもつながります。
【温度・湿度管理も安心して任せられる精密機器取り扱い業者を選ぶポイント】
温度・湿度管理も徹底して行わなければならない精密機器の輸送や移設などを依頼する場合、業者選びが重要です。
この章では、信頼できる業者選びのポイントをご紹介します。
<精密機器取り扱いに関する経験・技術>
高いレベルで温度・湿度管理を行うには、経験や技術が求められます。まずは、過去にどれくらいどのような精密機器を取り扱った実績があるのかを確認しましょう。作業計画書や工程表などの内容からも、仕事を丁寧にする業者なのかは感じ取れますし、質問をした際の回答内容にも注意して技術力や信頼性を見極めてください。
<従業員全体の意識の高さ>
精密機器の取り扱いに関する経験や技術力のある業者であれば、適切な温度や湿度の管理をしてもらえるだろうと期待ができますが、もう一つ大事なのが作業を行う従業員の仕事に対する意識です。同じ方法で梱包や輸送、据え付けなどを行うにしても、精密機器の繊細さを正しく理解し、多方面に気を配りながら責任をもって作業を完遂しようという意識を持っているかどうかで、作業の質は変わってきます。
こうした意識が従業員全体に浸透していれば、作業担当者が誰になっても安心して任せることができるでしょう。
こうした意識の高さが浸透しているかどうかは、問い合わせや見積もり、打ち合わせ、契約など、作業前の段階からも伺えます。仕事に対する意識は顧客対応に現れますから、できるだけ契約前のタイミングで見極めるようにしましょう。電話の対応が丁寧であったり質問にわかりやすく答えてくれたりと、誠実に向き合ってくれる業者であれば作業も丁寧に行ってくれる可能性が高いといえるでしょう。
<補償内容の確認(保険加入の有無)>
どれだけ注意をして各種業務にあたっていても、何らかのアクシデントで精密機器が故障したり破損したりするリスクを0にすることはできません。精密機器は高価なものがほとんどですから、万が一にも故障や破損が起こってしまった場合は大きな損害が発生してしまいます。保険に加入していれば故障や破損が発生しても補償してもらえるため、精密機器の輸送や移設を依頼する場合には、保険の加入やその内容が非常に重要です。多くの業者が保険に加入していると思いますがその内容は様々ですので、加入の有無だけではなく、依頼した精密機械が破損した場合、紛失した場合はいくら支払われることになるのかなど、具体的な補償額についても確認することが重要です。
【まとめ】
精密機器を取り扱う際には、衝撃や振動だけではなく温度や湿度にも注意する必要があります。高温や低温、また急激な温度変化が精密機器に悪影響を与えたり、湿度の高い環境はサビや腐食を発生させたり、湿度の低い環境は静電気による電気回路のショートを引き起こしたりするリスクがあるのです。
精密機器の温度・湿度の管理を行うには、空調設備や恒湿装置をうまく活用するとともに、輸送機器や施設内に断熱素材を使用したり、耐熱カバーや結露防止カバーを活用したり、防湿効果のある方法で梱包したりと様々な対策方法があります。
こうした対策を適切に取り入れて対応してくれる業者に依頼するために、実績や従業員の対応などから見極めるようにしてください。